設計趣旨
京都の酒文化を後世に伝承していく役割を持つ建築として、乱数を用いた無数の柱による多柱スペース、通り庭の考え方を用いた客室、バックヤードからなる宿泊施設の設計を提案した。「空間のひだの重層性は日本特有の現象であり、それによる奥という概念が比較的狭小の空間の深化をも可能としてきた」とする槇らの知見に立脚し、「奥行き」をテーマとして設定した。 京都府内の遠く離れた伏見と久美浜を日本酒がつなぎ、府全体として、日本酒の文化の振興を助長するような宿泊施設としての機能を持った建築を具体的な設計案として提示することを目的とする。設計手法が建築に与えることのできる価値を示し、同時に、酒づくりという貴重な日本の産業の一つを支えることができればと考える。